商業界ゼミナールは、今から半世紀以上前、昭和26(1951)年2月、箱根に百余名を集めてその第1回が開かれました。
当時の日本経済は混乱の最中にあり、激しいインフレが続き、商業は不当な高値や、情実販売が横行し、道義は地に落ちていました。
それに対し、「正しい商売」をやり抜かなければ、これからの時代にはお客から見捨てられることを憂慮し、商業界ゼミナールで倉本長治主幹は、すべてのお客に公平で公正な販売を行うことや、近代的な商業のシステム、特に当時はアメリカの先進技術の導入、うそや隠し立てのない科学的な経営、正札販売、協力者としての社員の育成などを主張したのです。
この考えに共鳴した全国の商店主たちは、次第にこのゼミナールに集い、ついに毎年2月には2000人から3000人近く参加するようになりました。
内容も、新保民八先生、岡田徹先生などの厳しい精神主義に加えて、新しい小売流通業の将来をチェーンストアへの道に見定めた若手の講師陣や、次々と専門l化された技術面での指導者が多彩な講義を展開し、日本で最大の規模と伝統を誇る「商業界ゼミナール」として、認められるようになったのです。
昭和30(1955)年代に、このゼミナールに集まった人たらの中から、今日のビッグストアのトップをはじめ、全国のこれはと思われる大小のお店や、商業関係の指導的立場にいる方々が輩出しました。その意味では、今日の日本の商業のあり方を定めた原点はこのゼミナールにあった、といつても過言ではないでしょう。
商業界ゼミナールの理念である、"店は客のためにある"とは商業の基本精神であり、小売業の根本的な使命を示したもので、お客様の側から商売を考えるという哲学の発想です。小売業の使命とは、国民の暮らしを守り、育て、社会文化の発展に役立つことであり、それ故に常に正しく、いつも新しくなければなりません。
「商いは高利を取らず、正直に、良きものを売れ、末は繁昌」とは大村彦太郎(日本橋の呉服屋、白木屋の創業者)という江戸商人の商訓ですが、今日にも生きています。
さあ、規模の大小、立地の善し悪しよりも、あなたの中に芽吹く人間らしい"あきんど"の心を生涯かかげつづける決意を、いまこそ、しっかりつかもうではありませんか。
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